リレー小説03


「う〜ん・・・。」  低い呻き声の後、宮村先生が目を開く。 「先生、気付きました?」 「ああ、相原か・・・ってコリャいったい!?それに相原のその格好?」  布団から起き上がった先生の目が大きく見開くのを見て、あたしはクスクス笑い始めた。  先生が驚くのは無理もなかった。  先生の視界には先程までと同じ部屋とは思えない部屋の様子が映っているのだから。  ・・・あの後、気絶した先生を引きずりながら布団に戻したあたしはなるべく見ないように先生の体を拭き新 しいパジャマに着替えさせることに成功した。そして、ついでに部屋の掃除、先生の夕食の準備などを済ませっ てしまったのだ。 「どうです、綺麗になったでしょ♪」  あたしは大きいのYシャツの袖を折り返しながら、笑顔で称賛の言葉を求めた。  でも先生は「ああ、そうだな・・・。」と虚ろに答えるだけで、視線をあたしから外せないでいた。 「あと、この格好はどこぞの方が出しっぱなしにしておいたシャワーで制服が濡れたので着替えとして貸しても らいました。」  少し皮肉っぽい言葉と裏腹に、あたしは笑顔でその場でクルッと回ってみる。  濡れた制服の代わりに先生のYシャツとスラックスがあたしを包んでいる。  身長差のおかげで両方ともあたしには大きいので折っている袖と裾が風を纏って舞う。 「似合います?」  おどけて尋ねるあたしに先生は答えず、ボーッとあたしを見つめている。  心なしかその頬が少し赤みが差しているように見えた。  その視線に、あたしの頬も幾ばくか熱くなる。  なんだかとても温かい雰囲気が部屋を包んでいる気がした。 「――さ、ぼんやりしてないで早くご飯食べてください。時間だって結構遅くなってるんですから。家には応連 絡を入れておいたけど、先生が送ってくれる…訳にもいかないでしょ?」 「ん、そ、そうだな。女の子があまり夜遅くに帰るというのもなんだしな」  あのぉ…あたしは一応男の子だったんですけど……  などと、こちらを完全に女の子扱いしてくれている宮村先生に声に出さずに心でツッコミを入れたあたしの、 その目の前で、布団から立ちあがろうとした先生の体がグラッと前に傾いでいく。 「はうっ……」  どれだけ横になっていたかは知らないけど、お風呂場で既に倒れている事も忘れたのか、自分の体が段々と斜 めになって行くことに不思議そうな顔をする先生。 「あ、あぶない!」  どうせ立てないんだから支えてあげようと布団に近づいていたあたしは、その支えるべき先生が倒れそうにな るのを見て、慌てて手を伸ばして前に回りこむ。  けれど小柄で非力なあたしには、細身とは言っても大人の男の人の体重を受けとめるだけの力が無く、あたし たちはその場へもつれ合うように倒れこんでしまった。  今度は…あたしが下になって…… 「せ、先…生…?」  お風呂場の時とは違って、今度は先生の顔はあたしの胸に埋もれてはいない。けれど、薄いパジャマとYシャ ツを間に挟み、丸い乳房は体温の高い先生の、男の人の胸板に密着し押しつぶされている。  やだ…あたし、ノーブラ……  シャワーで濡れた服は全て脱いでいる。エンジ色のボレロも、白いブラウスも、そして、あんまり高くは無い んだけど値段の割りにデザインがよくて気に入っていたブラも……今は買い物に行った時のビニール袋に入れて カバンと一緒においてある。だから、あたしの胸に先生の体が… 「あの、先生? あたしは…その…重たいんですけど……」  あたしの左肩から頭をうなだれている先生の耳元に語り掛ける声が、微妙に震えを帯びている。  必死に押しのけ様としても、あたしの力じゃ大人の男性を押しのける事はなかなか出来ず、しかもあたしたち の今の体勢は……まるで先生に押し倒され、その…この後、しちゃうような……とにかくそんな危険な体勢。  胸の膨らみだけじゃない、お腹も触れ合い、スラックスをはいた足が先生の足と互い違いに重なり合っている。 そして…股間も……って、えええええぇ!?  うそ…先生のアソコ……ものすごく大きくなって……や、やぁ…ビクビクしてる……  体の大きさの違いから、腰の位置はあたしの方が少しだけ上。おかげで先生の右太股がスラックスの股間をグ イッと押し上げてきているんだけど……まるであたしと先生の体の隙間に捻り入ってくるように、とても人の体 とは思えないほど硬く勃起した肉棒の先端が、下腹の柔らかい部分にグリグリと押し付けられている……  なんで…なんでこんなに大きくなってるのよ! 先生は風邪を引いてて…それであたしはお見舞いに来ただけ で…こんな事をするつもりなんて……!! 「先生、いや、いやあぁぁ!!」 「……あ、相原……」  トクン…  ……な、なによ、さっきの「トクン…」って……あたしは…あたしってば一体何を考えてるのよ!!  先生に熱い吐息で名前を呼ばれ、それまで身の危険を感じて早鐘を打っていたあたしの胸は不意に大きく高鳴 ってしまった…… 「相原…いい…匂いだ……」  トクン……トクン……トクン……トクン……  先生の圧し掛かられ、押しつぶされた乳房の奥…鼓動が…とまらない……  ――ゴクッ  唾が喉に…流れない。緊張のし過ぎでカラカラになった喉は大きく動くだけで、わずかに開いた唇からほんの 少し湿った息を吐き出している。  あたし…このまま先生に……宮村先生は昔の担任なのに、こんな事を…… 「………先生…あたし……」  もう…あたしは抵抗する事ができない……  押しのけようと思えば出来るかもしれないけれど、あたしの腕には力が入らない。目を閉じ、一度、二度深呼 吸をすると、畳の上に肘から先を投げ出してしまう……  トクン……トクン……トクン…トクン…トクン……  先生に抱かれる…その決心をしたあたしの鼓動がわずかに速くなっていく。結構逞しい先生の胸板に押し当て られた乳首を中心に、そこから体温が伝わってくるようにYシャツに包まれた乳房が熱を帯び、一つ脈を打つた びに胸が張り裂けてしまいそうなほど胸がドクンドクンと跳ねあがってしまう。  なんで嫌がらないんだろう……あたしは…先生にだったら抱かれてもいいの?  こんなつもりで来たんじゃない。こうやって押し倒されているのも状況に過ぎない。  だけど、今のあたしはその状況を自分から受け入れ、押し留めようとはしていない…… 「宮村…先生……」  下腹に押しつけられた高ぶりの脈動は収まるどころか、今にもお腹を突き破りそうなほどに大きさを増してい た。これが先生の興奮……あたしを抱きたいと言う意思表示の現れだった……  もしこれが寺田先生や佐野先生だったらあたしだってジッとしていない。でも宮村先生にだったら…結構ドジ だけど、いつも笑顔で優しく接してくれた宮村先生にだったら……あたしは……………でも…いつになったら… …  目をそっと開けると、正面には木の天板に雨漏りの跡だろうか、黒っぽい染みが薄っすらと浮かび上がった天 井が見える。ぱちぱちとまばたきをし、はっきり目が見えるようになってから顔を横に向けると……宮村先生は 頭をグッタリとうなだれ、あたしが動いた事に対して何ら一切反応を見せないでいた。 「もしかして…気を失ってます?」 「……………」  問いかけにも反応無し。なんだ、やっぱり気絶してたのか……じゃなくて、 「先生? ちょっと先生、ちょ、やだ、目を覚まして! 起きてください!!」 「…………ぐぅ…」   ああぁ〜〜ん、あたしに被さったまま寝ないで下さいよぉ〜〜!! 重いぃ〜〜! 熱いぃ〜〜!! 先生、 お願いだからどいてぇぇぇぇ!!  さっきまでの盛り上がっていた(あたしが勝手に盛りあがってただけなんだけど…)雰囲気はどこへやら、気を 失っている先生を何とか押しのけ、その体の下から這い出たあたしは体を起こすと、顔を赤くして乱れたシャツ の胸元を気にしながらも、重たい大人の体を急いで布団の中へと引きずり込んだ――


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